しゃがめない日本人が増えている?その原因としゃがむメリット|蹲踞姿勢の秘密
目次
蹲む~しゃがむ~
遠い昔足元の何かに夢中で見入ったとき
自然にとっていたこの姿勢。
君は今本当にしゃがめているかな?
この子も
この子も
実はしゃがめていないかもしれない。
それだけ奥深い“しゃがむ”姿勢を
今回は探求していきましょう。
しゃがむ姿勢の効果
下に落ちたものを拾うとき、こんな姿勢をとっている人もいるんじゃないかな。
これ、実はしゃがめていない。
しゃがむとは、
関節をきちんと折りたたんで、身体を収めていく」という人間の自然な動作の一つ
出典:『しゃがむ力~スクワットで足腰がよみがえる』/©「えにし治療院」院長 中村考宏(晶文社)
大事なのは人間の自然な動作の一つという部分で、人間本来が持っている、滑らかな動きを最大限に生かせるのが、しゃがむ動作だということだ。
ちなみにしゃがめるようになると、
- 股関節、膝、足首などの関節に十分な可動域が生まれる
- カラダの深部感覚がわかるようになる
- 結果的に、楽に動けるカラダの使い方ができるようになる
という効果があるよ。
しゃがめない現代人
とはいえ、しゃがめない人の多いご時世。
同時に抱えられやすい悩み
- 肩のこり
- 首の張り
- 膝や腰の痛み
- 尿漏れ
- 便秘
引き起こす原因になるのが、下半身の筋力の低下だ。
日常の中にしゃがむという習慣を取り入れることは、現代人の生活ではなかなか使われない部分に運動効果を与えてくれる。
続けていけば下半身の鍛錬につながっていくお得な姿勢だったりするんだ。
しゃがめない理由
しゃがめないのは体が固いから。
体が固いのは関節が固いから。
そう、関節って大事!
関節とは「2つ以上の骨が互いに可動性をもって連絡する部分」を指している。
運動不足で血が滞ると、関節機能を支える筋肉は固く縮んでしまう。
これがひどくなると常時筋肉痛のような状態になり、関節の可動域が狭くなってしまうのだ。
ちなみに腱や靭帯の水分量も関節の柔軟性に関連している。
体の半分以上は水で組成されているから、お白湯を飲んで体の中をすんだ状態にしておくといいよ。
しゃがむ姿勢と住環境
欧米人のアジアンスクワットチャレンジ
しゃがむ姿勢の別名とも言える「アジアンスクワット」。大半の欧米人はこの姿勢がとれないという。
この名を世に広めた中国メディアによると、
アジア人なら100%アジアン・スクワットができるのに対し、米国人はわずか13.5%しかできないことが分かった。その13.5%のうち、9%がアジア系米国人で、残りはヨガの達人だった。
出典元:人民網日本語版 2016年3月4日 ©人民日報社/羊城地鉄報
ヨガの達人への疑念が残るけど、頑張ってもしゃがめない欧米人がいることは紛れもない事実だね。
欧米人の履物
欧米人がしゃがみにくい理由の一つが「靴」を履くという習慣だ。
最新の研究では洋靴文化が足の歪みの原因の一つであることがわかってきている。
しゃがめない人が多い欧米社会で見られる、靴を履いたままベッドに横たわる風習もその裏付けになりそうだ。
洋靴を履く ↓ 足指が圧迫される ↓ 足首が動きにくくなる ↓ 膝が固くなる ↓ 股関節が硬くなる
といった感じで”しゃがむ”姿勢が封印されてしまっているのが現代の姿なのだ。
ちなみにいつから靴を履くようになったかといえば、もっとも古いものと言われているのが次の2つ。
- サンダル(古代ローマ人)
- ブーツ(中世のゲルマン民族)
現代女性にも違和感なく履かれているよね。
これらの靴の起源を辿ると、元はどちらも男性の履物だったらしい。
出典元:世界の民族ねっと© 2019-2021 世界の民族ねっと
このように、足首や脛まで革ひもで縛り上げた靴を履いていた欧州の部族もいたようだ。
でも、本来足を守るはずの靴によって関節の可動域が狭まっていたら本末転倒だよね。
過酷な環境下を生き抜くためには、靴が脱げて転ぶということはあってはならないことだったに違いない。
現代でも今日から裸足や靴下で外出するという訳にもいかないよね。
それほどまでに生活に定着している靴だけど、日本で庶民に広まったのは江戸から明治にかけての頃だという。
日本人と履物
(引用元:撮影者:不明/所蔵:長崎大学附属図書館(中央図書館))
一方、それ以前はというと綿や絹の鼻緒がついた履物が親しまれていた。
街中で着物や羽織を着た人にすれ違うと、不意に目をひかれるよね。
そして、その足元には草履や下駄がある。
草履や下駄は、挿(す)げられた鼻緒が材木と足との一体感を結ぶ履物。
履いてみると足指の接地感を意識させてくれるのがその特徴なんだけど、一歩一歩かみしめるように歩いてみると、いつもと違う足の表情に気付けるんじゃないかな。
たとえば・・
- 足音
- 歩幅
- 爪先の方向
下駄や草履は、美しい足元の情緒に気づかせてくれるんだ。
そして、足裏に前後の重心感覚を思い出させてもくれる。
つま先重心の日本文化
靴を履いて歩いてみるとわかるんだけど、洋靴をはくと重心はかかとに集まりやすい。
つまり「かかと重心」で歩いている。
歩くとき、ほとんどつま先や足指を感じることなく歩けてしまうのが靴の最大のデメリットなんだ。
その「かかと重心」の対となるのが「つま先重心」。
下駄・草履はつま先重心を感じさせてくれる。
そして、前かがみの姿勢をとると二足歩行の人体は自ずとつま先重心になりやすい。
日本にはそういう文化が多い。
たとえば、日本の伝統的文化である稲作農業の田植えの姿勢だ。
稲作が始まったとされるのは、およそ2000年前の弥生時代。
この頃より耕作で使用されていた田下駄や草履はのちに日常でも用いられるようになり、つま先重心を支える文化財として現代まで残されている。
他にも、茶葉を炒っている竈(かまど)で火の番をする姿。
撮影者:江波信國
盥(たらい)や桶を使ってひとつひとつ手洗いする洗濯。
(引用元:撮影者:不明/所蔵:長崎大学附属図書館(中央図書館))
などなど。
貧しくとも活気のあった日本人の秘密。
それは、つま先重心の足元に隠されていたのだ。
システムキッチンや洗濯機の普及でもうほとんどしゃがむ必要のない現代。
古きよき文化とその物腰から習っていくのが、令和時代に必要とされる学びの姿勢かもしれないね。
古来より伝わる姿勢「蹲踞」
ちなみにしゃがむって、漢字で書くと、「蹲む」とか「踞む」と書く。
実は、その字そのものな姿勢があるのをご存じかな?
それが、「蹲踞(そんきょ)」だ。
縄文時代では休憩の姿勢であり、現代では相撲や剣道でみられ、神職に関わる者、宮司や巫女さんの基本坐法の一つであり、礼法ともなっているこの姿勢。
実は結構スゴイ姿勢なのだ。
試しに3分やってみてほしい。
先に言っておくけど、少し痛いですw
しかし足は痛いのに、頭はスッキリとクリアになり、清らかで静寂な状態を体感できる。
それは古き良き日本人の朗らかで落ち着いた態度でもある。
そう、日本人はその姿勢で美しい態度・その心持ちを受け継ごうとしたのだ。
逝きし日本人が残した蹲踞は、それを思い出すための遺産なのかもしれない。