蹲踞(そんきょ)の姿勢の意味&やり方解説|瞑想より効果があるメディテーション
現代でも、剣道の試合や
お相撲さんがやっているのを見たことある人も多いかな?
ほら、こんなポーズ。
その歴史は謎に包まれながらも、スポーツ、武道だけでなく、
古代神話から、歴史ある伝統芸能のセカイにも残っている。
また神道、宗教の風習などにも見られ
現代においても、神職に関わる者、宮司や巫女さんの基本坐法の一つともなっている。
100キロを優に越える力士たちの蹲踞。
弓道でも、蹲踞、また跪坐(きざ)姿勢での打ち方が残っている。
弓道(座射)(引用: Youtube 浦上栄先生 日置流印西派体配)
剣道の試合でも、こんな感じ・・・
ちょっと見えにくいが、神社の儀式などで見られる「膝閉じバージョン」蹲踞
(引用:youtube 住吉大社 湯立て神事2013 「2013.01.12住吉大社若宮八幡宮例祭 湯立神事」)
(※開き蹲踞よりも難易度高め)
素人目には、一見、不合理にも見えるこの姿勢には、いったいどんな意味が隠されているのか?
今回はそんな謎に包まれた「蹲踞(そんきょ)」の知られざる由来を紐解きながら、その驚くべき効能についても解説していくよ。
今日から実践できる「蹲踞の正しいやり方」は記事の後半で紹介しているから、チェックしてみてね!
目次
蹲踞とは?
古くから伝わる日本の身体文化の一つ、「蹲踞」。
体を最も低くすることで、相手にかしこまった形を示す敬礼であり、重心を下げ、カラダの軸を整え、精神を整える、古の礼法。
日本人の基本所作でありました。
今でこそ、剣道や相撲などのイメージが強い「蹲踞」だけど、実は遥か昔の縄文時代では蹲踞は休憩する姿勢だったということが、発掘された縄文人の骨などから分かってきているらしい。
蹲踞の姿勢で休憩をとり、縄文土器や土偶なんかも作っていたんだとか…
(引用:八戸市 是川縄文の里・発掘調査 Copyright 2020 Hachinohe City.)
この土偶なんて閉じ蹲踞をしているようにも見える。
つまり「蹲踞」は、この東洋の地で人々の生活の中に深く溶け込んでいた身体文化だったのです。
それでいて、欧米人にはこの姿勢をとることが難しいという事実。
その起源は、太古の神話にまでさかのぼる
相撲は、元来、勝ち負けを競うスポーツとしてではなく、祭り、神事として行われてきたものでした。
その起源を辿れば神話にまで行き着くともいわれる長い歴史をもち(諸説あり)、旧約聖書では、ヤコブと天使が相撲をとったとも・・・
そんな謎多き日本の伝統文化である相撲の独特さ、他のスポーツとの大きな違いの一つとして、試合開始の合図は第三者(行司)ではなく、勝負を行う両者に委ねられるという点があります。
そう、互いの呼吸(氣)を一致させるその瞬間に向かって
思考を超えた領域、その暗黙知へ人体を至らせるために
塩によって場(土俵)を清め、「蹲踞」が繰り返される。
(引用:The Japan Times [Yokozuna Futabayama (second from left) performs his ring-entrance ceremony before retiring on Nov. 19, 1946, at the original Ryogoku Kokugikan in Tokyo. | KYODO] THE JAPAN TIMES LTD.)
弓、剣の道において、現代でも蹲踞が残っていることも、
相撲と同じく互いの呼吸を感じる、まさに生死をかけた戦いとして、その極限の世界にあった武士道が起源にあるからこそ
「蹲踞」によって肚の感覚を研ぎ澄ませていた、その名残りといえましょう。
そう考えれば、もっとも厳格であるべき神職においても蹲踞という風習が見られることも不思議なことではなく
自我をおさめなければ、神に仕えることなど許されないと、頭の思考ノイズ=煩悩を戒めるために行われていたのではないでしょうか。
蹲踞の意味、効能
実は、人体端末科学的に、これほど理に適ったフォーム(姿勢)はありません。
ちまたで言われ始めた蹲踞のダイエット効果・美容効果などは、もはや副次的なものに過ぎません。
「蹲踞」の効能は、カラダの力みを解き、
同時にカラダの芯である”正中洞”を立てることで、
頭(脳)ではなく、腹(丹田)という収束点を浮かび上がらせる。
人体の隠された機能の最大化にこそあります。
蹲踞は「型」の順守が大事です。
これからその「型」について詳述していきましょう。
初心者におすすめ!「開き蹲踞」
開き蹲踞のチェックポイントは全部で九つあります。
構え方
まずは立ち位置です。
立ち位置に左右差があると蹲踞姿勢をとった時にも重心がズレてしまうので注意しなければなりません。
蹲踞は構えた時にはすでに日頃の自分の重心の取り方や体への向き合い方が結果として出る姿勢です。
「蹲踞しながら修正していけばいいか」という訳にはいきません。
まずは構える前に左右差がないか?ある方は体を偏って扱っている場面を日常から修正していくように意識してください。
まずは立ち姿勢から真摯に向き合っていきましょう。
チェックポイント
◎足の位置が前後していないか?
↓足の位置が前後にならないように気をつけましょう。
↓この状態で開き蹲踞の構えをするとこのように足がズレてしまいます✖︎
↓脚を揃えたら腰椎5番から腰を写真のように”しの字”にするように反り、まっすぐ骨盤の間に頭が入るようなイメージで背骨の中心に降りて来ます。
↓構えた時に足首、膝が硬いと写真のように鼠蹊部に押し返されてしまい重心を下げることができません✖︎
足指
足指は木の根を表しています。
流れ指にならないように注意し、足指の噛み締めを意識してください。
開き蹲踞では足指への重心のかけ方が非常に大事なポイントになります。この土台の重心の取り方が足首より上の部位の型を整える時のキーとなります。一つずつ確認していきましょう。
チェックポイントは三つ
◎足指は流れていないか?
◎足指の噛み締めはできているか?
◎重心が小指側に流れていないか?
↓足の指が流れてしまっています✖︎
↓足指の噛み締めができています◎
↓写真のように小指側に重心が乗るのは間違いです。小指側に重心が乗ることで鼠蹊部の折り込みができなくなってしまい仙骨の”しの字”ができなくなってしまいます✖︎
↓写真のように親指側に重心を乗せて構えるのが正しい型です◎
足首
開き蹲踞は縄文人にとっては休憩の姿勢であったように蹲踞姿勢では足首に座らせてもらいます。
そのことを足首のゆりかご感と言います。足首は85~90度に構えるのが目安で柔らかければいいというわけでもありません
逆に足首が硬いと膝が下がらず仙骨が反れなくなってしまうので写真を見て角度を確認してみてください。
チェックポイントは二つ
◎足首が90度になっているか?
◎膝と同じ方向に足が出ているか?
↓これが足首が90度になっている正しい型です◎
↓これでは足首が固くて膝の角度が高すぎます✖︎
↓このように膝と足首が同じ方向に向くように構えてください◎
膝
私たちは普段、体の偏りなどを意識していないため、左右バランスがわかる蹲踞姿勢をとったときに日々の重心の偏りが型に出てしまいます。
自分でも気づかぬうちに写真のように左右バランスが崩れていることがあるので、姿鏡などで左右のバランスがズレていないか確認してください。
チェックポイントは二つ
◎膝が開き過ぎていないか?
◎両膝の高さに左右差がないか?
↓膝が開き過ぎている✖︎
↓両膝の高さに左右差がある✖︎
↓正しい型◎膝が開きすぎず、左右のバランスも崩れていません。
太もも
太ももは少し内側に内旋して構えるのがポイントです。
太ももの内旋は足指の重心の乗り方が重要で、太ももを内旋できないと鼠蹊部を織り込んで仙骨を反り”しの字”で構える上で大切なポイントになります。
チェックポイントは一つ
◎太ももが内旋しているか?
↓太ももが内旋している◎ 足指にかかる重心が親指側に乗ることでこのように太ももを内側に入れて構えることができます。逆に小指側に重心が乗ってしまうと太ももの内旋ができず外側に開いてしまうので気をつけましょう。
鼠蹊部・仙骨
鼠蹊部とは写真の股関節の部分を指します。
腰椎を”しの字”に反るためには仙骨を反らないといけませんが、仙骨は仙骨だけを意識すれば反れるものではなく、鼠蹊部を織り込むことで連動して仙骨を反ることができるようになります。
チェックポイントは二つ。
◎鼠蹊部を織り込めているか?
◎仙骨を腰椎5番から反れているか?
↓ここが鼠蹊部です。
↓鼠蹊部が織り込めていない✖︎
↓鼠蹊部が織り込めている◎
↓仙骨が丸まっている✖︎
↓仙骨が腰椎5番から反れている◎
↓上の下半身のポイントを押さえることでこのように綺麗な蹲踞の型になります。正しい型を目指して稽古していきましょう。
手首
開き蹲踞では親指と薬指でムドラーという型を作ります。
薬指はお箸を持つ時に使う指でもありますが、実は薬指を使うことで体の重心が下がる下腹重心の型でもあります。手首の位置や構えは肩や頭の位置にも繋がるので写真を参考に確認していきましょう。
チェックポイントは四つ
◎手首が内側に入り過ぎていないか?
◎手首が外側にで過ぎていないか?
◎肘が伸びきっていないか?
◎手の指が丸まっていないか?
↓手首が内側に入りすぎている✖︎
↓手首が外側にですぎている✖︎
↓肘が伸び過ぎている✖︎
↓手の指が丸くなってしまっている✖︎
↓写真のように薬指の第一関節が親指の腹にあたり綺麗な輪を作りましょう◎
肘
蹲踞姿勢は体の前面で構えるものではなく、背面の感覚で構える型です。
その背面感覚は肘を締め肩甲骨を絞る事で背骨が綺麗なS字を描くことで、後頭部の感覚や背中の感覚を意識できるようになります。また肘を締める動きは体にとってのコンパスの役割があり、距離感や間合いを算出する部位でもあります。
チェックポイントは二つです。
◎脇が開き過ぎていないか?
◎脇を締め過ぎていないか?
↓脇を開き過ぎている✖︎
↓脇を閉じ過ぎている✖︎
↓指3本分の隙間を開けて構えましょう◎
↓正しい型◎
上半身の構え
蹲踞姿勢のバランスは上半身ではなく下半身でバランスをとります。
蹲踞稽古は3分間や5分間この姿勢を保って重心を下げる稽古ですが、行なっていると足が痛くなってきたりしてバランスを崩して手をついてしまうことがあります。しかし手をついてしまうことが間違いなわけではありません。
ですが蹲踞をやり始めた頃はそうは言ってもバランスを保つことで精一杯になり、上半身をくねらせてなんとかしてこら得ようとしてしまう傾向がありますが蹲踞時は上半身の力は抜けているのが目安になります。
写真のように力んだり、曲がったりしていないか確認してください。
チェックポイントは七つ
◎体を前屈させすぎていないか?
◎体を後傾させすぎていないか?
◎型に力が入りすぎ力んでいないか?
◎鳩尾がでしゃばっていないか?
◎顎と顔が前にですぎていないか?
◎下を向きすぎていないか?
◎上を向きすぎていないか?
↓体を前屈させ過ぎている✖︎
↓体を後傾しすぎている✖︎
↓肩に力を入れすぎて強張っている✖︎
↓鳩尾が出しゃばっている✖︎
↓顔と顎が前にですぎている✖︎
↓下を向きすぎている✖︎
↓上を向きすぎている✖︎
↓頭頂部からお尻に向かって竹が一本刺さるように背中のS字と”しの字”を意識しましょう◎
以上が開き蹲踞の実践指導です。
蹲踞でぜいたく休憩しよう
いかがだったでしょうか?
実際に上のチェックポイントを意識して「開き蹲踞」に挑戦した方は、
蹲踞、その姿勢の恩恵を体感したかもしれません。
蹲踞姿勢は正しい型で行うと、たった3分でも足は痛くなりバランスを取るのがとても難しいものです。
しかし、反面終わった後の足は痛いのに、頭はスッキリとクリアになり、清らかで静寂な状態を体感できたと思います。
日本にはそうした重心姿勢、「下腹重心」が身体文化として根付いていました。。
蹲踞で休憩を続けていると、いかに自分が世界をありのままに見れていなかったかに気が付きます!
自分自身で、カラダを自我で覆い閉じ込めています。
蹲踞をすることで、カラダは絶え間なく働き、あらゆるものと混じって、同時にあらゆるものが移り変わっていく。
そんな諸々に支えられて生きていることを感じることができます。
そうして支えられていることを感じた体は、落ち着きともに、肚が据わります。
明治時代の「女性の集合」写真(引用:Yahooニュース (大阪学院大学経済学部教授 森田健司氏 所蔵))
肚の据わった人体は美しい。
デジタル全盛期の令和だからこそ、ぜいたく休憩「蹲踞」で腹から落ち着く感覚を体感してみてくださいね!
👇動画でも「蹲踞」の型を解説しています!